500 Startups Japan、グロービス・キャピタル・パートナーズ、LINEベンチャーズらから1.5億円を調達した株式会社justInCase。IT技術を駆使しスマホ保険に始まり、モノ保険など様々な保険商品を開発中のCEO畑加寿也に会社の成り立ち、今後の展開を聞いた。
保険業界にITを持ち込んだー
ー商品がスマホ保険一つで、しかも正式開業前という状況にも関わらず、500 Startups Japan、グロービス・キャピタル・パートナーズ、LINEベンチャーズらから1.5億円調達しました。どういった経緯で資金調達に至ったんでしょうか?
今回の調達では、これまでと違い、幅広く多くの投資家とお話させて頂きました。その中で、売り上げゼロであったこともあり、もちろん投資家の方からお断りを頂くこともありましたし、逆に当社の方からお断りをすることもありました。その中で、投資頂いた投資家の方々には以下の様な特徴があります。
500 startups:
創業当初からサポートしてもらってた独立系VC。今回もグロービスに次いで大きな投資を頂いています。
グロービスキャピタルパートナーズ:
日本の独立系VCで、実績豊富。ライフネット生命にも投資経験のある数少ないVCの一つ。
Line Ventures:
Lineは、中国におけるWeChatであり、またWeChatが保険も含めたプラットフォームになっている中、明らかな将来シナジーもあることをお互い合意できたこと。
ー決め手はなんだったのでしょうか?
これまで全くと言っていいほどITの手が入っていない保険業界が、変革のしがいがあると投資家の方々にも明らかだったことと思います。
誰もしていないことをしたかったー
ーもともとはどんな仕事をしてたんですか? アクチュアリーという保険業界のリスク管理や商品開発を専門とするニッチな資格があります。新卒でアクチュアリー専門のコンサルティング会社に入り、その後は投資銀行や再保険会社で、15年程度保険会社向けのサービス提供をしてきました。キャリアの前半は、プログラミングや分析、後半はそういうのを使用したソリューション営業に従事してました。
ーそもそもなぜ起業しようと思ったんですか?
誰もしてなかったから。
というのは半分だけ冗談ですが、半分本当です。ずっと保険業界に関わってきてたので、今後も保険業界でなんらかのことをして行くのだろうとは思ってました。ある日、ふとしたことから、米国から来た若者起業家と飲みに行く機会があり、そこでInsurTechというものが海外でどんどん大きくなってきていると聞き(2016年前半)、そこからいろいろリサーチしていたら、「あ、確かにこれは有りえるな」「ITで様々なサービスが変容してるのに保険はまだまだだしな」「日本ではライフネットとかあるけど、まだまだ余地はありそうだな」「って、だれもやってないじゃん。やろう。とりあえず特許だ、ビジネスプランだ、いろいろ話を聞いてみよう」って感じですね。
ーなぜスマホ保険を最初の商品にしたんですか?
スマホ保険はスマホが壊れた際の修理費用を保険でカバーするというAppleCare+に似たような保険なんですが、これは、明確に戦略的な理由があります。
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アプリをインストールしていただいて最初にわかる情報は「ユーザーの使っているスマホについて」。なのでスマホそのものを保険の対象にするのが自然と考えたこと
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スマホのセンサー情報等を事後的に取得することで、「データ分析に強い会社だけど、開業時はデータがない会社」という点をクリアできること(※データがないと金融庁的な問題で開業できないため)
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完全に個人で異なる保険料(Personalized Premium)を実現し、アプリベースで保険商品が組成できるのだという実験的な商品として最適
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格安SIMへの移行の流れもあり、需要もあると見込まれたこと
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P2P保険を実証実験するのに最適な保険種類であったこと(ただし許認可の都合で一旦断念)
海外メンバーと24時間ノンストップ体制でー
ー香港・ニュージーランド・和歌山といった遠方でリモートで仕事している人もいます。一体どこで知り合ったんですか?
香港在住のCTO小泉は僕が新卒時のコンサルティング会社(保険会社がお客様)でのほぼ最初のお客さんで、15年来の付き合いですね。なんか、「畑さん、今度、香港で主夫することにしました〜」っていきなり謎のメールが来たんで、そこで「じゃ、一緒になんかやります?」とビジネスプランを打ち明けたところから始まってますね。
ニュージーランド・和歌山の方々は、クラウドワークス(*)!ちょっと信じがたいですが、その当時は多分Wantedlyとかの存在も知らなかったですし、そもそも僕がまだサラリーマンでこっそり活動しないといけない状況でした。よってまだオフィスがないわけですから、必然的にリモートとなり、依然として当社ではリモートカルチャーが根付いています。
(*)あとで気づいたのですが、本当に優秀な方にクラウドワークス経由でたままた巡り会えてとてもラッキーでした。。。
ー都内在住でもリモートで働いている人もいます。リモートで働くことをOKとしたのはなぜでしょうか?
先ほどの通り、まずリモートで開始しているという経緯もあるのですが、特にエンジニアは方向性と役割分担をしてしまえばある程度リモートで十分機能すると考えており、OKにしていますね。ただし、リモートの限界はすでに感じていますので、うまいことマネージできる仕組みも日々試行錯誤中です。
ーメンバー構成、メンバーの特徴を教えてください。
保険xITなわけですから、保険の経験が豊富なメンバーとITの経験が豊富なメンバーが多くなってます。僕はもうコーディングしても足を引っ張るだけなので、今のところは80%くらいのメンバーが実際にサービスで使われるコーディングをする状態になっていますね。「IT会社がたまたま保険業をやっています」という状態を今後もキープしていきます。
変わった人しか取らない、と決めてるわけではないですが、ちょっと変わった人が多いですね。普通な人が目立つくらい。どうせなら面白いメンバーがいいですよね。この人と働いたら面白そう、一緒に仕事したいか、という点を重視してメンバーは選定させていただいてます。
あと、この間ライフネット生命様の人事担当の方と話す機会があったのですが、やはり大学卒業したての23歳くらいの若い方に、「保険」と言っても全く訴求しないんですね、能動的に利用した経験などほとんどないはずで。そこは当社も同じなんですが、比較的気軽な商品を取り扱っていますのでなんとか若者や保険の素人に届くような保険商品になるように日々努力しています。そういう意味では、保険業界未経験のエンジニアやデザイナーにこの1年ほどたくさん教えていただきました。
ー大幅な時差がある地域でリモートしてる人もいます。コミュニケーションや仕事の運用はどうしてますか?
はい!一時期、アジア(東京、和歌山、香港、ニュージーランド)+ドイツ+バンクーバーの体制でしたからある意味24時間ノンストップ体制ですね!
リモートでもバーチャルオフィスとしてなるだけ顔が見えるようにするためremottyというサービスを使っています。当社の東京のオフィスも随時リモートワーカーから状況把握できるようにカメラで見えるようになってます。
あと、slackでもなるだけ、冗長になってでもわかりやすく、かつ「●●やってるんですが、わからないのでどうしたらいいですか?」という質問方法ではなく、「わからないのですが、自分は以下のAとBという方法があると思いますが、どう思いますか?」と、一定程度思考プロセスが見える化できるような質問にするなど、工夫をするようにしています。
ーオフィスはどのような環境でしょうか?
半蔵門のLifullhubというシェアオフィス内の個室に入居してます。他にもスタートアップや個人事業主の方も多く入居されていて、大企業の方や一般IT企業の方が来られると結構驚かれますね。あとLifullさんの社食がヘルシーです!駅からも近いです!
ー正社員として入ってもらい、専業してもらうというのが一般的なイメージですが、ジャストインケースでは他の仕事をしながら参画している人が多いです。それでもよいと思った理由はなんでしょうか?
はい、IT業界の方は正社員になるより業務委託を好まれる方も多くいらっしゃったり、常に様々なサービスに触れて、知識や経験を磨きたい、というご希望の方も多いためですね。もちろん、まだまだ会社として基盤を作っている段階であり、完全なフルタイムでの人員の確保を多くできる状況にないという当社側の都合もありますが。
ー代表から見るジャストインケースってどんなところですか?
珍しい生き物が結構いる動物園。
ー今後のジャストインケースに必要なのはどのような人ですか?
スキルセットは、別途Wantedly等を見ていただくとして、気概としては、以下のような方が必要と考えています。
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スタートアップで10名以下の小さなチームから100名以上の規模まで大きくなる過程を現場で経験された方
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他人・他の会社とは違うことをすることをモットーとしているキャリアを意識されている方
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保険業界の特有の非効率さ等を経験され、それをITの力で変えたいと、共感いただける方
ージャストインケースに入る人に対してジャストインケースの面白さやメリットなど教えてください。
ここは、実際に参画いただいた人の声を引用させてください!
正直保険のことは興味なかったけど、旧態依然とした分野で、パイオニアぽかったから
かなり自由に設計等させてもらえそうだったから
初回面談がいきなり飲み会で面白そうな雰囲気だったんで
なんか今いる会社の仕事簡単すぎてもっと最先端で誰もやってないことをやりたかったんで
リモートOKだったんで
海外ではインシュアテック がかなりアツクなってきているようなのに日本では・・・と思ったところに本命が出てきた!と思ったので
保険を面白くして、もっと身近にするー
ージャストインケースの今後の展開は?
海外展開です。海外でもニッチマーケットを見つけて参入していきます。
ー今後の展開を実現するために必要な課題は?
もうビジデブ(事業開発)・提携サイドはありがたいことにパンパンですので、これを執行するエンジニア・デザイナー人材の確保ですね。これは非保険のスタートアップとの競争になるのでかなり大きな課題となっています。
ー今後のビジョンを教えてください。
「保険を面白くして、もっと身近にする」これが、当社の当面の実現したいことです。ハッピーではない商品である保険を、よりハッピーな商品に変容していく、これを実現していきます。
ー代表から読者へのメッセージをお願いします。
参画していただけるメンバーの方も募集していますが、こんな保険作ってくれ!とかのアイデアがあれば是非いただければ、時間がかかるかもしれませんが、是非取り組ませていただきます。twitterでお気軽にご連絡いただいても結構それからビデオ会議で話したりお会いしたりしてます。そういうところから思わぬ発見があったりもしていますので、「いや〜DMしても返信ないんじゃないかな〜」とか思わずメッセージください!実際、僕も、面白いこと言ってる人や、お会いして見たいなというエンジニアの方など、ブログやtwitter等でなるだけお声がけするようにしています。
(インタビュー&撮影: 木庭有基)
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