50兆円の保険市場に挑む!「保険SaaS」の可能性とやりがい

justInCaseTechnologies(以下、「JICT」)は、2021年より本格的に保険SaaSの提供を開始しました。

同社は創業以来、グループ会社で少額短期保険業者のjustInCase社とともに消費者向けの保険商品の提供を主に手がけてきましたが、「助けられ、助ける喜びを、すべての人へ。」というビジョンを達成するために、企業向けソリューションとして保険SaaSをスタート。デジタル完結保険の専門家として、ユーザーのための保険商品をより早くスムーズに生み出していくためのスキームを提供しています。今回はそんな保険SaaSの事業開発を手がける、同社COOの荒地竜資と同社CTOの大畑貴裕に保険SaaSの可能性と現場で感じる面白さ、難しさなどを語ってもらいました。

プロフィール

荒地 竜資, Chief Operating Officer, 取締役

東京海上日動で大企業向けのリスクコンサルティングから日本初の仮想通貨保険の開発まで幅広い業務に従事。海外出資先スタートアップとの「Embedded Finance」の先駆けとなる取り組みをプロジェクトマネージャーとしてリード。営業企画、Fintech企業とのアライアンス構築、デジタル戦略の立案・実行を経て弊社join。

 

大畑 貴裕, CTO, 開発部門長

ERPパッケージのメガベンチャーで、日本上陸直後であったAWSの技術研究、およびクラウド運用サービスの立ち上げに従事。クラウドインフラ構築・運用から、上場企業や金融機関へのプリセールス・導入コンサルタント・システム監査対応まで、幅広く業務をこなす。その後ヘルスケアスタートアップ2社で、最初のエンジニアやCTOとして、開発チーム立ち上げやシステム内製化に従事。医薬品売買サービスや医師紹介サービスの開発・運用をフルスタックにリードし、両事業とも売却に至る。

保険業界の課題をSaaSで解決する

―JICTが2021年に発表した企業向けソリューション、保険SaaSの「joinsure(ジョインシュア)」。このサービスが生まれた背景について教えてもらえますか。

荒地:保険業界が抱える様々な課題を解決するために生まれたのがJICTの保険SaaS「joinsure」です。今、保険業界は社会から求められる保険商品の開発、サービス提供の期待値に応えられているのかというと、難しいと言わざるを得ないのが実情です。

なぜ「本当に良い」保険商品が生まれないのか。

いくつかの課題がありますが、理由の一つに「商品開発の長期化」があります。保険を商品化するには認可とシステム開発の両方が必要で、大手企業が新しい商品を開発・発表する場合には1〜2年の期間がかかることがザラなんです。

大畑:変化の早い社会において、商品開発に1〜2年かかるのは保険業界特有ですよね。

荒地:そう。でもは、何年も企画を温めて商品を発表するような時代ではありません。スピーディに商品を出し、出してから市場やユーザーにチューニングしていくプロダクトマーケットフィットの視点がどの分野にも必須になるわけです。それは保険も同じ。

大畑:商品を迅速に出していくことは業界全体の活性化にも繋がりますしね。

荒地:保険業界では、この開発期間は当たり前だと思われてきました。でもその慣習を打ち破ったのがjustInCase(JIC)だったんです。2020年は5つの保険を開発し提供を開始しました。

こうした流れの中で多くの保険会社さまからお問い合わせをいただくようになったことが、保険SaaSのサービスに繋がっていきます。

大畑:「なんでそんなに早く商品開発できるの?」と問い合わせがすごく増えて。自社開発の少額短期保険を1年で5商品。「こんな保険会社は他にない」と注目いただくことになりました。

荒地が説明した通り、保険の商品化には「認可」と「システム開発」の両方が必要です。しかし保険会社はレガシーなシステムやデータセンター、管理の仕組みを何十年も引き継いでいることが多く、その基盤上で新たな商品を開発するにはかなりの工数と予算がかかることがネックでした。その部分をSaaSという形で解決するのが「joinsure」です。過去のレガシーを踏襲せずに商品開発できるので、開発にかかる期間・予算ともに大幅に削減できるんです。

荒地:私たちのビジョンは「助けられ、助ける喜びを、すべての人へ。」です。保険はインフラであると考え、相互扶助などの「助け合う仕組み」をより世の中に定着させていくことが企業としてやるべきことと考え、そのためにあらゆる不安に寄り添い、保険を開発・発明しています。

創業当初から自社で商品を開発してきましたが、保険業界全体が抱える課題を見て、自社商品だけでは足りないな、と。保険SaaSを業界に提供することで、業界全体でより良い保険の開発を、スピーディに行えるようになります。サービス提供を通じて我々が目指すビジョンに、より早くたどり着けるのではないかと考え事業化しました。

ローンチ前から問い合わせが続いていた

―「joinsure」の導入によって、保険会社やユーザーは具体的にどんなバリューを享受できるのでしょう?

大畑:保険募集・契約管理・保険金請求管理をそれぞれSaaSの基盤上で提供するので、圧倒的に低価格でスピーディに商品開発ができます。また、創業時からデジタル完結保険を提供してきた我々だからこそ可能な、ユーザーフレンドリーなUI・UXの設計や、業務効率を改善できるシステムなどを提供しています。

荒地:経験や知識の豊富な老舗保険会社さまのニーズにも、保険の運用経験はないが保険商品を通じて自社の顧客への付加価値の提供を図りたいという他業界のお客様のニーズにも、どちらにも応えていける体制があります。

ー保険SaaSをローンチして1年弱経ちますが、市場での手応えはどうですか。

荒地:ありがたいことにたくさんのお声がけをいただいている状態です。私自身、SaaSの営業は中小企業から広げていくのが定石かなと思っていたのですが、大手企業がかなり興味を持ってくださっているのが保険業界特有だなと。

規模の大きな企業ほどレガシーシステムが抱える課題が大きいので、当社のサービスがお役に立てている実感があります。

大畑:サービスとして正式にローンチしたのは約1年前ですが、ローンチ前からかなり問い合わせはあったので、それが加速している感じですよね。

私がJICTに入社したのは3年前ですが、当時から注目度は高くて。入社後すぐに大手保険会社さまとの協業案件に取り組んだのを覚えています。

一方で、ここ数年のエンベデットファイナンス(※2)の盛り上がりの中で「今まで自社で保険商品をつくるなんて考えたこともなかったけど、できるでしょうか?」というお問い合わせもいただいたり。かなり可能性を感じますね。

※2 非金融の既存サービスに金融商品を組み込む仕組みのこと。不動産の賃貸契約時の保険契約や、飛行機のチケットと一緒に購入するキャンセル保険などがその一例。現在、多くのサービスがウェブ化・DX化を促進しており、改めて注目度が高まっている。

―なぜ今、保険SaaSはそこまで盛り上がりを見せているのでしょうか?

荒地:商品やサービスのDX化が当たり前になったことで、デジタル完結型の保険が求められるようになってきたことが考えられます。

保険もオンライン販売に移行していく中、DX化に課題感を持つ企業さまや、既存の枠組みの中で販売してきた大手企業さまから引き合いをいただいています。

そのニーズを加速させたのはやはりパンデミックですね。対面営業が減ったことにより、ユーザーと保険会社の距離が広がっています。

必然的に、既存サービスの付加価値といった文脈で売っていこうという流れが加速している実感があります。

大畑:アフターコロナ、ウィズコロナに移行すると、保険業界はどうなるんでしょうね。

荒地:ユーザーが二極化していく感じはしますよね。「高度な対面コンサルティングを希望する層」と「自分の意思で必要な保険のみに入る層」。

大畑:たしかに。

荒地:個人的には、前者のニーズは高まるけれど、後者がより広がると予想しています。そうなると、ユーザーニーズに合わせてその保険の目的をわかりやすく伝えることが重要になってくる。JICが自社の保険販売で培った知見を、保険SaaSのサービス利用者さまにも共有していきたいですね。

顧客課題に対峙しアジャイルで開発。「高い山」に登る面白さ

―保険SaaSのサービス開発に携わる面白さはどんなところにあると思いますか。

大畑:開発側から見ると、アジャイルで開発していきながらこちらから提案していけるのがうちならではの面白さだと思います。顧客からの要望を待って仕様書どおりに作っていくのではなく、新しいものや、世の中で話題になっているものを試していけるのが純粋に楽しいですね。

あとは、保険の業務経験のある人と一緒に、リアルタイムで考えながら作ったり改善したりしていくスピード感にも、エンジニアとしてやりがいを感じられるのではないでしょうか。BtoBでこれだけハイスピードに開発・提供していける体制はないと自負しています。

荒地:事業開発側から見ると、顧客の事業の上流から入り込めるところにやりがいを感じます。通常、システム開発を担うベンダーは発注元の指示通りに作るのが一般的ですが、当社はそこだけをやることはほとんどなくて。

「顧客企業の先にいるお客様に価値を提供するために、どんなビジネスである必要があるのか?」を担当者の方と一緒に何度も確認・検討しながら、それを実現するためのシステムがどうあるべきかを議論できるので、かなり刺激的です。

大畑:システムを提供した後も、顧客のビジネスの成功に向けて常にPDCAを回し続けますからね。従来の金融システムだと納品して終わり、というイメージがあるけど、そんなことは全然ない(笑)。

荒地:あとは、対峙しているマーケットの大きさにもワクワクしますよね。生命保険・損害保険をあわせると、保険業界は50兆円規模で、日本の産業の中でもトップ5に入るほどの巨大市場です。その中で、保険SaaSへの温度感が確実に温まってきているなか、高い山を登れる楽しさはあると思います。

―逆に、難しいと感じる点はありますか?

大畑:もちろんありますよ。まず、解決しなければならない顧客のビジネス上の課題が大きい。

荒地:大きいですね。JICTでは、The model(※3)に代表されるような分業制の顧客コミュニケーションを行うのではなく、顧客企業のアカウントにどっぷりつかって伴走します。彼らの課題と業務そのものを理解してソリューションを提供するんです。

さらに、保険会社の課題を解決するだけではなく、その先にいるユーザーの課題解決も考える必要がある。

※3 営業プロセスを、マーケティング・インサイドセールス・フィールドセールス・カスタマーサクセスに分担するという考え方およびフレームワーク。共業プロセスとも表現される。

―そこまで課題が大きいと、保険業界の専門知識や経験がなければJICTで活躍するのは難しいでしょうか?

大畑:いえ、そんなことはありません。プロダクトごとにスクラムを組むのですが、チームの中に保険のプロがいるので保険業界未経験のエンジニアやデザイナーも安心して仕事ができます。

より良いものをユーザーに届けたいという想いがある方や、課題を解くのが好きな方であれば、すぐにキャッチアップできると思いますよ。

まさに私自身が保険業界未経験でCTOになっていますし、保険のプロは社内にたくさんいるので安心してください。

荒地:面白いバックグラウンドを持つ人が多く在籍していますよね。

例えばプロダクトマネージャーの松枝

彼女は大手コンサルからスタートアップ2社にキャリアチェンジした経験があり、今はご家族の駐在帯同でオーストラリアに住んでいます。子育てもしながら、フルリモートでフルコミットしています。

あとは保険業界出身でも「俺が業界を変える!」とうちに来てくれた人がたくさんいる。

大畑:西川は損害保険会社で支払い査定業務をやっていて「ITでもっと保険業務は効率化できるのでは」という想いがあったんですね。未経験エンジニアとしてのジョインでしたが、ITと保険業務の知見を活かし、今はプロダクトマネージャーとしてjoinsureの開発をリードしてくれています。

―業界知識はなくても大丈夫とのことですが、どんな人にジョインしてもらいたいですか。

大畑:プロダクト開発は、大きく二つのチームに分かれます。一つ目は「joinsure Engagement」で、ユーザー接点に関わるプロダクトを開発・運用していくチーム。顧客企業の担当者や社内のメンバーと議論しながら、「より良いユーザー体験の追求」「数値目標の改善」「そのための調査・分析」そして「試行錯誤」を楽しみたいと思える人に、ぜひ来ていただきたいです。

二つ目は「joinsure Record」で、商品企画や保全業務に関わるプロダクトを開発・運用していくチーム。

これもなかなかチャレンジングです。まずは、保険会社のあらゆる保険商品を扱えるよう、抽象度の高いプロダクトを作る必要があります。さらに生命保険のように100年以上続くシステムを考えるにあたり、いかにレガシー化させずに継続改善していくかを検討する必要もあります。もちろん、大手金融機関・上場企業のお客様から高い品質・セキュリティも求められますが、スタートアップとしてのアジリティも必要。なので、難しい課題への挑戦を面白いと思える人に向いていると思います。

荒地:大きな業界を、高い課題解決力で突破していきたいというマインドセットを持つ人ですかね。繰り返しになりますが、我々が向き合っている市場は50兆円規模。そこに向き合う勇気や、困難にひるまず挑戦していける姿勢、思考力を持っている方に、ぜひ活躍してもらいたいです。

―ありがとうございました。


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