世界史上最大級IPOを目指す中国アント・グループの実態

アリペイという中国の最大スマホ決済アプリの運営会社であるアント・グループは、2020年8月に香港と上海の両証券取引所に新規株式上場を申請しました。
ブルームバックメディアによると、株式上場で350億米ドル前後(約3兆7,000億円)の調達を目指しているアント・グループは、上場延期になっています。
アント・グループは企業時価総額が約2,800億米ドル(約29兆5,000億円)と予想され、時価総額で世界第3位の金融会社であるバンクオブアメリカに迫っています。
本記事では、アント・グループの目論見書の内容を元に、アント・グループの全体事業概要とInsurTech事業の実態について解説します。

アント・グループについて

2014に設立されたアント・グループ(旧アント・フィナンシャルサービスグループ)は、アリババ傘下の金融子会社として、スマホ決済アプリであるアリペイを軸に金融サービスを展開しています。
会社名は2020年6月にアント・フィナンシャルサービスグループから、「フィナンシャルサービス」という表現が抜けたアント・グループへ変更されました。
社名変更の理由は、アント・グループは将来的に金融サービスの提供だけでなく、IT会社として様々な企業へ革新的なITサービスの提供も目指すとのことです。

アント・グループの事業内容

アント・グループは、アリペイのユーザー向けの電子決済サービスと金融サービス、そして企業向けのITサービスの3本を事業の柱としています。
2004年にリリースされたアリペイのアクティブユーザー数は、直近1年間に10億人を超え、中国人口の7割以上を占めています。
アクティブユーザーというのは、特定期間内にアリペイのサービスを1回以上利用したユーザーと定義されています。

電子決済サービス

アリペイには8,000万以上の加盟店があります。
アント・グループは、加盟店からアリペイ決済による取扱高の一定の割合を手数料として徴収しています。
アリペイ決済による取扱高は着実に伸びており、2020年6月までの1年間に約118兆元(約1,830兆円)に達しています。
それとともに、アリペイの収益は、同期間に約549億元(約8,210億円)にのぼっています。
上記の数字を踏まえると、アリペイは100元の取扱高ごとに約0.05元の収益が得られていることがわかります。

金融サービス

アント・グループの金融サービスは、下記の3つの分野に分かれています。

  1. 融資:リボ払いのHuabei、短期無担保融資のJiebei
  2. 資産運用:約170社の金融機関の運用商品販売のAnt Fortune、世界最大マネー・マーケット・ファンドのYu’ebao
  3. 保険:P2P医療互助サービスの相互宝、保険販売のAnt Insurance

金融サービスの2019年の収益は、2017年の2.3倍の約678億元(約10,500億円)に急成長を遂げました。
アント・グループの全体収益をみると、金融サービスの割合は2017年の45%から2019年の56%に11%増加しました。
そのうち、融資サービスが10%増、資産運用が2%減、保険が3%増となりました。

ITサービス

アント・グループでは、ブロックチェーンからデータベース管理システムまでのITサービス事業を展開しています。
例えば、2016年にリリースされたAntChainとは、取引情報等のデータをデジタル化することで、データの透明性や追跡可能性を向上させるブロックチェーンソルーションです。
ITサービスの2019年の収益は、約9億元(約140億円)であり、電子決済サービスと金融サービスの2つの事業より微少でした。
一方、アント・グループの社名変更に伴い、アント・グループがIT会社として活躍していく中、ITサービスが徐々に重要な収益の源となるであろうと考えられます。

アント・グループのInsurTech事業

アント・グループのInsurtech事業は、以下の2つのサービスを中心に展開されています。

相互宝

2018年10にサービスが開始された相互宝とは、中国初となった、誰かががん等の病気になった時、他の加入者が支払保険金を分担し、保険料を後払いする医療互助サービスです。
相互宝の加入者数はサービス開始後1年弱で急速に増えており、1億人を遂げましたが、多くの企業の参入により、成長が鈍化しているようです。
2020年8月末時点で相互宝の加入者数は約1億720万人にのぼっています。
アント・グループは、相互宝の支払保険金に8%の運営費用を上乗せた保険料を徴収しています。
アリペイのアプリ内で開示されている相互宝の保険料の情報に基づいて算出すると、2019年に相互宝の支払保険金は約26億元(約400億円)、運営費用は約2億元(約31億円)となりました。

Ant Insurance

Ant Insuranceとは、約90社の保険会社の保険商品を取り扱うプラットフォームです。
Ant Insuranceの特徴の1つは、保険会社と連携することで、アリペイユーザー限定の保険商品を開発することです。
例えば、Haoyibaoという医療保険は、多くの保険未加入のアリペイユーザーに向けた保険です。
特徴として、安価な保険料、保険料月払い、さらに契約終身更新も可能なことの3つの点が挙げられます。
相互宝の数字とアント・グループのInsurTech業績を元に計算すると、2019年にAnt Insuranceの徴収した保険料は約350億元(約5,380億円)、収益は約87億元(約1,340億円)となりました。

日本の決済アプリにおける金融サービス

PaypayやLINE payといった日本の大手スマホ決済アプリでも、金融サービスの拡大に向けた動きが進んでいます。
Paypayの運営会社であるZホールディングスは、自社の各ブランドの金融サービスを「Paypay」のブランドに統一するほか、他社の金融サービスを取り扱うというマルチパートナー戦略を図ると判明しました。

出典:Zホールディングス株式会社 2020年度 第1四半期 決算説明会資料

また、LINE payの運営会社であるLINE Financialは、基本的に金融サービスごとに1社の金融機関と提携しています。
LINE Financialの提携会社の例としては、LINE証券の野村証券、LINEほけんの損保ジャパン、そしてLINEスマート投資のフォリオが挙げられます。
世界のキャッシュレス決済市場の競争が激化する中、多くのスマホ決済アプリは金融サービスなどの多様なサービスを提供するスーパーアプリへ進化しています。
これらの効果は、あまり金融サービスを利用していないユーザーにも金融サービスが広げられることや、ユーザーを囲い込むことにつながるのではないでしょうか?

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