少額短期保険が出来た背景は?
少額短期保険はもともと共済をきっかけとして誕生しました。特定の者を支払い対象とする共済は、不特定のものを支払い対象にする保険とは異なる立ち位置となります。
その共済の中でも、JA共済など「制度共済」と「根拠法のない共済」があります。1990年ごろに後者の「根拠法のない共済」が多数設立され、募集方法や保険金支払いに問題が生じたことが少額短期保険ができたきっかけです。
実際、マルチ商法による募集などに対する消費者からの苦情も多くなっていき、共済の掛け金を集めたまま消費者に保険金を支払うことなく倒産してしまうような詐欺事件が起こりました。
これをきっかけに、2005年5月に保険業法が改正され、根拠法のない共済に対しても保険業法が適用されることとなりました。既存の共済事業は保険会社の免許取得あるいは保険業法の改正で取り入れられた「少額短期保険業」の登録が義務付けられています。
少額短期保険は共済から保険への移行にあたり、商品、事業形態、保険契約者など多くの点で規制を受けていて、この規制が少額短期保険の特色を形成しているともいえるでしょう。
少額短期保険の参入主体
少額短期保険業の参入主体を3分類すると以下の通りです。
親会社等の業種からの参入
不動産、冠婚葬祭、介護などの事業を持つ親会社を有するグループ。親会社が販売チャネルの役割を果たすことが多い。
例)エポス少額短期保険、プラス少額短期保険
保険業務経験者が中心となった独立系の参入
特に親会社などはなく、保険業務に精通した人材が代表となって設立に深く関与しているグループ。既存の保険会社とは異なる商品を提供することで差別化を図る。
例)エール少額短期保険、justInCase
保険会社を保有するグループ企業の参入
大手保険会社により設立されたグループ。グループ内の保険会社のノウハウを活かした商品開発を行っている。
例)Mysurance、楽天少額短期保険
保険会社と少額短期保険業者の比較
保険会社 | 少額短期保険業者 | |
損保、生保の兼営 | 不可 | 可 |
最低資本金・基金 | 10億円以上 | 1000万円以上 |
保険期間の限度 | 制限なし | 損害保険2年
生命保険・医療保険1年 |
保険金額の上限 (1 被保険者あたり) | 制限なし | 制限あり※ |
商号・名称 | 生命保険、損害保険、火災保険、海上保険など生命保険会社、損害保険会社であることを示す文字を使用することが必要 | 規定なし、ただし保険の文字を使用する場合は少額短期保険のみ |
商品審査の手続き | 認可制 | 事前届出制 |
※保険金額の上限は以下の通りです。
・すべての保険の合計額で1000万円
・個人賠償責任保険を含む場合2000万円
・保険種類ごとに以下の金額
生命保険 | 300万円 |
傷害・医療保険 | 80万円 |
重度障害保険 | 300万円 |
特定重度障害保険 | 600万円 |
傷害死亡保険 | 300万円 |
損害保険 | 1000万円 |
少額短期保険の業界規模は?
少額短期保険保険協会が公表した2018年度の決算概況によると、
2009年 | 2018年 | |
事業者数 | 66社 | 101社 |
募集人資格取得者 | 8万人 | 22万人 |
保有契約数 | 391万件 | 831万件 |
収入保険料 | 415億円 | 1,032億円 |
となっており、成長している業界といえます。
成長している理由としては、
・最低資本金が1000万円となっていたり、商品審査の手続きが一般的な生命保険会社や損害保険会社に比べて比較的緩やかであること
・今までにない独自性の高い商品が次々と誕生していること
・もともと強固な販売チャネルを有している母体がある会社が多いこと
などが考えられます。
どのような商品を取り扱っているか
独自性の高い商品
一般的な生命保険会社や損害保険会社は、万人に向けた商品作りを行っています。少額短期保険は、一般の保険会社が取り扱うにはマーケットが少なすぎる、独自性が高すぎるといった理由から商品化出来なかったものを積極的に商品にしている為、特定の層のニーズに応えやすいという特徴があります。
シンプルな商品
少額短期の保険はシンプルなものが多く、複雑な特約があまりありません。商品内容が顧客にとって分かりやすい分、どの保険に加入するかの意思決定が容易です。
今後の展望
少額短期保険業界は着実に成長し続けています。今後も消費者のニーズにぴったり合った商品が登場することが予想されます。
当社もさらに価値の高い保険体験を世に出すことを目指し、あらゆる不安に寄り添う、 “良い”保険を発明していきます。
また、2023年12月より、少額短期保険の運営実績や保険業界における多数のシステム提供実績を活かし、企業の少額短期保険事業立ち上げをサポートする新事業「少短設立Navi」を開始いたしました。少額短期保険事業立ち上げをお考えの方は、ぜひご連絡ください。まずはご相談からどうぞ。
お問い合わせ・ご相談はこちら
参考文献
http://www.sonposoken.or.jp/media/reports/sonposokenreport086_1.pdf
https://drive.google.com/file/d/1i5hM3zGkgsbCaP7o7CtwM4Ztjz8mdcJj/view
https://www.jkri.or.jp/PDF/2019/sogo_79kumazawa.pdf