2016年に開業され、中国のInsurTechユニコーン企業である水滴は、2020年8月にシリーズDで2.3億ドル(約243億円)の資金調達を実施しました。
水滴の企業価値評価は約40〜60億ドル(約4,200〜6,300億円)にのぼるようです。
今回の資金調達では、テンセントやIDGキャピタル等の既存投資家だけでなく、新規投資家となった大手再保険会社であるスイス・リーも出資しました。
水滴が保険会社に出資されたのは初めてです。
スイス・リーは、今後水滴と協力し、オンライン保険業界の発展に寄与していく考えを示しました。
本記事では、水滴が既存事業の拡大に加え、今後どのような新規事業の立ち上げを図っていくかについてご紹介します。
水滴の既存事業について
ここでは、以前に紹介した、水滴の事業戦略における3本柱となっているサービスをおさらいします。
水滴は、主に都市規模や経済規模などが全国の基準に比べて低く、いわゆる三級以下と分類された中国都市の住民を対象に、医療保障の提供を中心とした事業を展開しています。
水滴は、P2P医療互助サービスの「水滴互助」と、治療費クラウドファンディングの「水滴筹」を広めることにより、健康リスクに備える意識を高め、保険への加入を促しています。
60社の保険会社の医療保険やケガ保険等を取り扱うプラットフォームの「水滴保険商城」のユーザー数は急激に増えており、2019年に前年比3倍増の4,000万人以上を遂げました。
「水滴保険商城」のユーザーの割合をみると、2019年に三級以下の都市の住民が76%を占めています。
さらに、2020年1月〜6月に「水滴保険商城」の取り扱った年換算保険料はすでに2019年と同額の60億元(約930億円)に達しました。
医療サービスへの参入
水滴は、医療保障の提供にとどまらず、今後はオンライン診療や介護といった医療保障関連のサービスを立ち上げていく方針を打ち出しました。
水滴のお客様は病気になったとき、医療費等を補う給付金が受け取れるだけでなく、治療を受ける場合等に必要な医療サービスも水滴で利用できるようになるとのことです。
例えば、水滴では、がん患者や慢性疾患患者等向けの特殊な薬剤を取り扱う「水滴好药付」というサービスを手がけています。
水滴は保険会社とともに、様々な製薬会社と連携することで、一般的な病院や薬局より割安で医薬品を販売することを図っています。
将来的に、水滴は中国版の米United Healthcareになることを志しているようです。
United Healthcareとは、医療費を抑えるために、医療保険と医療サービスを掛け合わせたマネジドケアサービスを提供する大手会社です。
マネジドケアサービスの例としては、価格や臨床的有用性といった基準でブランド薬とノーブランド薬が分類された処方薬リストの提供が挙げられます。
United Healthcareの契約者は、お手持ちの処方薬リストをお医者さんと共有することで、効果が同じで安価な薬を処方してもらうことが可能です。
おわりに
中国では保険会社の役割が多様化していることは間違い無いです。
中国平安グループの「平安グッドドクター」、衆安保険の「互联网医院」(オンライン病院)、そして水滴の「水滴好药付」と、保険会社が医療保障関連のサービスを立ち上げる事例は多くなっています。
事業拡大を図っているInsurTech企業は、同じ分野で新規事業を展開することよりも、HealthTech等のXTechへ参入する方が良い場合もあると考えられます。