中国アリババ生まれの返品送料保険を解説

中国最大手電子商取引(EC)のアリババ集団で生まれた返品送料保険は、2009年から毎年11月11日に行われている「独身の日(シングルデー)」というセールの成功に伴い、急成長を遂げています。
中国では、返品送料保険に先行している衆安保険に加え、現在11社の保険会社が返品送料保険の市場に参入しているようです。
今回の記事では、中国で流行っている、EC市場に特化した返品送料保険についてご紹介します。

返品送料保険とは?

返品送料保険とは、ECサイトから購入した商品の返品が発生した場合、購入者負担の返送料を補償するものです。
返品送料保険は、一般に認知されている運送保険と異なっています。
運送保険では、返品時の輸送の際に生じた盗難や破損等の損害が補償されますが、返送料は補償されません。
中国大手ECのアリババ集団では、2種類の返品送料保険が提供されています。
1つ目は、購入者が保険料を負担する購入者向けの保険です。
2つ目は、出品者が保険料を負担する、返品送料保険を無料サービスとして購入者に提供する出品者向けの保険です。
返品送料保険の保険料と補償金額は、商品の購入時に決まります。

返品送料保険の市場規模

中国保険行業協会によると、2017年の上位3社の返品送料保険の収入保険料は、合計約21億中国人民元(約329億円)でした。
そのうち、1位の衆安保険が約49%、2位の国泰(こくたい)財産保険が約27%、3位の中国人民財産保険が約24%を占めました。
また、衆安保険の業績をみると、同社の返品送料保険の収入保険料は、2015年から2018年まで横ばいでしたが、2019年には約31億中国人民元(約485億円)に急増し、前年比2.90倍となりました。

出所:衆安保険の決算を元に作成

eMarketerによると、世界最大である中国のEC市場規模は2018年の1兆5200億米ドル(約159兆円)から、2023年の約4兆億米ドル(約419兆円)に伸びていくと予想されています。
今後、中国での返品送料保険の勢いを増していくだろうと考えられます。

返品送料保険加入の流れ

購入者向けの保険

購入者は商品の購入の手続きを進めると、商品購入の内容等を確認するページ上で、返品送料保険に任意に加入することができます。
購入者は返品送料保険への加入を選択する時に、保険料と補償金額を確認することができます。
その後、購入者は返品送料保険の保険料、商品の代金、送料等をまとめて支払いの手続きを行います。

出品者向けの保険

購入者は商品の購入の手続きを進めると、商品購入の内容等を確認するページ上で、商品に返品送料保険が付帯しているか否かを確認することができます。
注文確定後、出品者は商品を発送すると同時に返品送料保険の保険料を支払います。

出所:アリババのECサイト「淘宝网(タオバオ)」

おわりに

新型コロナウイルス感染拡大による外出回数の減少がきっかけで、世界のEC市場の成長が急激に加速しています。
一方、商品をネットで購入しようとしても実物を確認できない不安に感じるという理由で、購入を断念したことのある方も少なくないでしょう。
返品送料保険の活用により、このような方の不安を解消することができれば、EC市場のさらなる成長につながるのではないでしょうか。

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