P2P保険会社の米Lemonade、ヨーロッパ進出へ

ソフトバンクが出資した、米国のP2P保険会社であるLemonadeは、2019年6月にドイツを始めとして、オランダ、フランス(次の進出先)といったヨーロッパ国への進出を進めています。
この記事では、Lemonadeのヨーロッパと米国で提供されているサービスとの比較や、Lemonadeとドイツの類似Insurtech企業との比較について説明します。

海外展開を積極的に進めているLemonade

設立5年後の2020年7月に上場した米国のLemonadeは、ヨーロッパ連合の28国(以下、「EU」)に開業の保険免許を取得して以来、2019年6月にドイツを皮切りに、2020年4月にオランダ、2020年末にフランスに進出し、海外事業の拡大を図っています。
米国では、Lemonadeの、家財保険に次いで2番目の商品であるペット保険を2020年7月から販売しています。
一方、ドイツとオランダでは、家財保険のみが提供されています。

各市場における顧客体験を統一に

米国とヨーロッパでLemonadeが提供している家財保険の顧客体験は統一されています。
公式サイトやアプリの全体デザインのほか、チャットによる各手続きの流れなども揃っています。
米国とヨーロッパの違いとしては、簡素化された電子契約書であるPolicy 2.0というサービスの存在が挙げられます。
Policy 2.0では、契約内容が平易な文章になり、保険料、補償範囲、補償金額などの重要な内容が2〜3ページに収まっています。
Policy 2.0を約款として利用するのは米国では規制当局に承認されていませんが、ヨーロッパでは先に利用が承認されています。

ドイツのフルスタック型Insurtech企業との比較

Lemonadeは、保険商品の開発から販売まで一貫して自社で行うフルスタック型と呼ばれるInsurtech企業です。
Insurtech企業数がEUの他国に比べて多いドイツでは、Lemonadeのようなフルスタック型のInsurtech企業であるOne Insurance, Coyaが活躍しています。
さらに、2010年に設立されたFriendsuranceは、P2P保険の先駆者として注目されており、保険ブローカーの事業を展開しています。

保険会社 Lemonade Germany Friendsurance One Insurance Coya
開始時期 2015年 2010年 2016年 2016年
資金調達金額 2020年7月に米国で新規上場、約343億円を調達 約16億円 約43億円
主な投資家 Softbank、GV、General Catalyst Horizons Ventures, e.ventures 2017年に保険仲立人プラットフォームを提供するWefox Groupに買収された Valar Ventures, eVentures, La Famiglia
対象商品 家財保険 家財保険、個人賠償責任保険、訴訟費用保険など 家財保険 家財保険、自転車盗難保険、電動バイク盗難保険、ペット保険、ペット賠償責任保険
サービスの特徴 •多人数のP2Pの仕組みで運営し、保険請求が発生した際に、保険金がGivebackプールから支払われる

•毎年Givebackプールの残高は、契約者が選択したチャリティーが行われる

•Policy 2.0という簡素化された契約書を応用

•少人数のP2Pの仕組みで運営し、保険請求が発生した際に、保険金がプールから支払われる

•毎年プールの残高は、契約者にキャッシュバックされる

•顧客の労働時間、睡眠時間、位置などの生活を分析し、低リスクでポイントを貯められるOneCoachを提供;今後、分析データに基づき最適な短期保険の提供を目指す

•契約者は無事故で保険料の割引に適用するポイントをもらえる

•バイク盗難保険と電動バイク盗難保険単体で加入できる

•簡単に保険加入でき、ダッシュボードですべての契約管理サービスを提供

•今後、数日間または数時間からの短期モノ保険の提供を目指す

チャットボットの活用 ◎ 保険加入

◎ 保険金請求

◎ 保険加入

◎ 保険金請求

顧客対応 メール メール、電話 メール、電話 メール、電話、オンラインチャット

Lemonadeは、チャットボットなどの最新技術による顧客体験の良さ等の特徴を活かすことで、競争が激化しているドイツ市場に定着するであろうと考えられます。
例えば、上記の4社の中には、LemonadeとOne Insuranceの2社がチャットボットの活用で保険加入や保険金請求の手続きを行なっています。
One Insuranceと比べると、Lemonadeのチャット体験には独特の対話設計があると言えます。
ただし、他社とは異なり、Lemonadeは電話またはオンラインチャットによる顧客対応を提供していません。

おわりに

上記保険会社の家財保険自体には大きな違いがありません。
世界中でInsurtech企業同士の競争が激化している今こそ、顧客体験や付加サービス等の競合優位性をお客様に評価されることが成功要因となると考えられます。

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