2015に米国で設立され、小規模企業を対象として様々な損害保険をオンラインで取り扱うNext Insuranceは、2020年9月に5回目の資金調達を実施し、これまで累計6億3,100万ドル(約665億円)を調達しました。Next Insuranceの企業評価額、いわゆるバリュエーションは20億ドル(約2,100億円)以上にのぼっています。
今回の記事では、Next Insuranceの事業内容や今後の展望について説明します。
Next Insuranceの事業内容
Next Insuranceは現在法人契約者数が10万社以上にのぼり、2020年1月に年換算保険料収入が2018年比の3倍増の1億ドル(約107億円)を突破しました。
出所:Next Insuranceのブログ
ここでは、Next Insuranceがどのような損害保険商品を取り扱っているか、どのような販売チャネルを用いているかについて紹介します。
サービス
Next Insuranceは、土木工事やフィットネストレーナーやカフェ運営者等の1,300業種以上に属する小規模企業のニーズに応じ、以下の損害保険商品を組み合わせたプランを全国で提供しており、保険の申し込みから保険金の請求までの手続きを全てオンラインで行っています。
- 総合賠償責任保険
- 専門職業人賠償責任保険
- 過失怠慢賠償責任保険
- 労働者災害補償保険(労災保険)
- 自動車保険
それに加え、Next Insuranceは保険業界初の保険承認状の電子版を発行するサービスを提供しています。
保険承認状 (Certificate of Insurance) とは、保険会社と被保険者との間で保険契約が成立した証として、保険会社が被保険者に発行するものです。
Next Insuranceの法人契約者は保険承認状の電子版を即時かつ手軽に自社のお客様へ送ることができるため、速やかに仕事を受託することができます。
販売チャネル
Next Insuranceの主な販売チャネルは以下の3つです。
- 自社の公式サイトやアプリ
- 保険代理店
- 事業会社パートナー
保険代理店に対し、Next Insuranceは2019年からNext for Agentsというプラットフォームを提供しています。
Next for Agentsにて、保険代理店はNext Insuranceの保険提案から保険販売まで行うことができます。
2019年末の時点で、Next for Agentsの利用者数は5,000人以上となりました。
また、Next Insuranceは様々な小規模企業を対象とした事業会社との提携において、小規模の企業への接点、そして保険販売の機会を増やすというメリットがあると考えています。
今後の展望
Next Insuranceは小規模企業へのワンストップでの保険サービス提供に向け、保険商品を幅広く強化し続けると予想されています。
例えば、大多数の米国の州で全ての企業が必ず労災保険に加入することが要求されている中、Next Insuranceは自社に先駆けて同様の商品をオンラインで提供しているPie Insuranceとの競争に直面しています。
Pie Insuranceは2017年から小規模企業向けの労災保険を中心とした事業を展開しており、2020年7月時点で米国の34の州に進出しています。
それに対し、2019年にリリースされたNext Insuranceの労災保険は米国の6つの州で販売されています。
今後、Next Insuranceは自社の取扱商品の組み合わせによる割安な保険料かつ充実の補償という特徴を生かし、労災保険をより多くの州で発売し、多くの新規顧客を獲得することができるのではないでしょうか?
また、今後Next Insuranceはメディアマーケティングを図っていくと見られています。
例として、2020年4月にローンチされたBuiltbyBusinessというキャンペーンでは、新型コロナウイルスの直撃で休業せざるを得なかったお客様の自身の才能を発揮した、Next Insuranceの会社名をテーマとした作品が掲載されており、自社のブランドが宣伝されています。
おわりに
日本には、中小企業数の割合が米国と同じ99%以上である一方、Next InsuranceやPie Insuranceのような法人向けのオンライン損害保険事業がないようです。
オンライン販売チャネルの開拓により、国内の中小企業向けの損害保険市場が拡大する可能性があるのではないでしょうか?